戦国武将・武者人形の戦国堂
和人形業界は、例年、夏期は、生産が一段落し翌年の準備に勤しむ充電期にあたります。この時期を利用し、メインの武者人形に関して、パーツ等の仕入価格や製作費用再検討など、よりお求め安い価格での提供を目標に、価格の見直し作業に取り組んでまいりました。9月より新価格でのご提供の運びとなりましたが、この間の経緯について下記ご参照下さい。

2008年9月6日
「価格改定の経緯について」

武者人形1、若い世代のお客様のニーズ
 歴史好きが昂じて「本格的な武将の人形を創りたい」という自分の趣味的情熱で始めたようなこの「戦国堂」の武者人形製作も、2005年5月のオープン以来多くのお客様、ファンの方に支えられ今日に至っております。趣味の領域に属する商品のためなのか、熱烈な武将ファンの方がご購入されるケースが多いためなのか、これほどご購入後に喜んでいただいたり感動していただける商品は今までの私の経験にはないもので、私にとってそれは至上の喜びですらあります。直接伺いお客様の喜ぶ笑顔を拝見する度に、自分のやっていることが間違っていないことを再認識し、同時に妥協することなく今後も品質を追及していかなければとの意を強くする次第です。

 現在に至るまで、ご購入いただいたお客様だけでなく、多くの見知らぬ方からも激励のメールやお問い合わせ、リクエストを頂戴しております。メールや手紙だけでなくお電話でお話を伺うことも多く、その多くが、20〜40歳前後の比較的若い世代の方からであったのが一つの大きな特徴でしょう。この辺もインターネットとパソコンを利用する「ネット通販」の顕著な特質と言えるのではないかと思います。

 身の回りを考えてみればすぐわかることですが、この世代は、家、結婚、子供など収入の割に最も様々な支出に追われ生活費用の捻出に最も苦労する世代でもあります。そんな背景からか、「もう少し手頃な値段で手に入らないか」という趣旨のご要望を本当に多く頂戴いたしました。実際、初春にも、ある30歳前後と思われる熱烈な戦国武将ファンの男性よりお電話を頂戴しましたが、その内容は「1年以上前からこの『戦国堂』の存在を知り、購入を考え定期的にモニタリングしてきたが、生活に追われなかなか購入費用が捻出できない。もう少し手頃な値段のモデルを出して欲しい。」という、ある意味非常に真摯で切実なものでした。

 一般にネット通販は対面販売と異なり、人の心が介在しない「冷たく事務的な取り引き」とはよく指摘されるところですが、こうしたご要望を拝聴すると、一般論にあてはまらない商品やお客様も存在することを再認識させられます。と同時に、これまで和人形の伝統製法と品質にこだわって試行錯誤しながら製作を続けてきましたが、まだまだ多くの人に喜んでもらえるような(価格の)商品ではなかった、という点に反省もさせられます。そして、惚れ込んだ和人形のテイスト・技法をを日本の誇る一つの文化として継承していくためには、若いこれからの世代にこそもっと受け入れられなければならない、という思いが一層強くなりました。

 周知の通り、和人形業界は節句商戦が終わると夏季の間生産がほとんど中断し、翌年の準備に勤しむ充電期間に入ります。「品質だけでなく、価格の面でも、若い世代を始め多くのお客様に満足していただける武者人形」の思いがきっかけとなり、この時期を利用しての全面的な価格見直し作業となりました。


2、伝統技法にこだわり品質を維持する
人形製作 私個人は、もともと和人形業界とは縁もゆかりもない人間で、継がなければならないものや守るべきものがあるわけではありません。従って、自分で飾りたいと思えるような人形を創ろうと思っても、それは必ずしも伝統技法による和人形である必要はなく、フィギュアでも銅像でもアクション・ドール(可動式人形)の類でも何でも良い訳です。

 しかしながら、今回の見直し作業にあたり、和人形でよいのか、伝統的な製作技法について見直す必要がないのか、といった検討は行いませんでした。これはもちろんこれまでに協力を得た和人形業界関係者たちへの配慮もありますが、それ以上に、和人形職人の手による細かい筆使いで再現された人形の顔の精緻な美しさ、本当の生地で織った衣装の質感、本物同様に威した金属製の鎧の重厚感など、私自身が完成作品と対面した時の印象が強烈で、今でもその感動を大切にしたいと感じているためです。熟練した職人による手作業が中心で、量産ができないという性格上、自ずからコストダウンには限界があるのですが、「和人形の伝統技法にこだわり、従来のクウォリティ(品質)を下げない」という前提のもと、コストの見直し作業を進めるという形になりました。


3、経済状況と和人形の製造原価について
 よく知られているように、一般的に和人形の製造は分業によって成り立っています。戦国堂の武者人形もこの例にもれず1人の職人にすべて製作を依頼しているわけではなく、実に多くの独立した職人(メーカー)が関わり、それらの組み合わせによって一つの作品が完成します(下表参照)。

品目 内容 結果(対策)
頭(かしら) 人形の頭・顔立ちの製作 試行錯誤の末選別された名人に依頼しており、製作意欲を考慮してもこれ以上の価格引下げは難しい ×
衣装 人形の衣服の製作 試行錯誤の末選別された業者に依頼しており、価格維持が精一杯。 ×
道具 冠、帽子、武具など人形の装着物の製作 製作依頼そのものに応じてくれる業者が限られていて価格維持が精一杯。 ×
鎧・兜 鎧、兜の製作 現状の細かいピッチ(威し幅)ができるのは一社のみ。価格維持が精一杯。 ×
各パーツを組合せ衣装を着せ、人形の形に組み上げる仕事 試行錯誤の末選別された業者であるが、依頼時期、ロットの改善により若干の価格引下げ効果あり。
屏風・飾り台 人形を飾る台や組み合わせる屏風の製作 種類によって有利な業者に製作を変更。若干の価格引下げ効果あり。

 現在、和人形業界を取り巻く環境は、少子化、日本的風習の衰退、経済環境の悪化(購入単価の下降傾向)、後継者難など様々なマイナス要因によって大変厳しくなっています。女の子の誕生祝に「市松人形」を贈ったり、美人の「尾山人形」を和室に飾ったりすることはほとんでなくなりましたし、桃の節句に15人揃えの雛人形を飾っている家を見ることもめずらしくなりました。全国的に有名な「人形のまち・岩槻」を例にとっても、人形製作に従事する業者の数は最盛期(バブル期)の三分の一以下に落ち込んでいます。従来、特に売上比率の高かった節句商戦だけに頼ってはいられない、というのが多くの一致した見方です(もっとも、こうした状況だからこそ、この戦国堂の武者人形のような面倒な製作依頼にも応じてくれるのでしょうが・・・)。

 最近では、さらに年明け以降の原油価格高騰に端を発する諸物価高騰があり、諸物価の上昇分を販売価格に転化できないジレンマの中でますます厳しい経営を強いられているのが現状です。こうした中、今春以降各関係先と粘り強く価格についてのキャッチボールを続けてきましたが、むしろ値上げを望む声も根強く、下手をするとやぶ蛇になりかねない状況も多々あり、単純な値下げには踏み切れない難しい状況です。
面相
 また品質維持という視点から考えると、例えば、職人の芸術的な筆遣いによって成り立っている人形の命とも言える「頭(かしら=面相)」の製作を例にとってみれば、誰に頼んでも良いというものではなく、望む通りの面相の描ける名人が限られており、強く値下げを要求することがかえってその製作意欲を削ぎ品質の低下を招きかねないリスクがあり、戦国堂の武者人形のような一品ものの世界では難しいというのが実感です。

 結果として、製造原価に関しては、一部を除き期待したような成果は得られませんでした。


4、販売経費の削減対策
 2005年のオープン以来、これまでかかっていた販売経費は次の通りです(下表参照)。

品目 内容 結果(対策)
店舗・展示 店舗、展示用レンタルスペースの確保 最もコストのかかる項目。当面本サイトのみでの販売とし展示用スペースの確保を凍結。
イベント 展示会等のイベント参加 当面、展示会等のイベント参加は行わない。
広告 新聞雑誌等での広告 当面、広告出稿を凍結。
その他販促物 カタログ、チラシ、シール等 新たなカタログ、チラシ、シール等の製作は凍結。
梱包・包装 納品用化粧箱、包装、梱包資材等 化粧箱の製作取りやめ、以降の包装は行わない。梱包資材は廃物利用。

人形展示 戦国堂の武者人形はこだわりの高級品であり、こうしたジャンルの商品では、サイト上の写真だけではなくやはり実物を見て購入を決定したい、と考えるのが自然です。こうしたニーズに応えるため従来一時期、提携先の百貨店や人形店で展示スペースを確保しての販売をネット通販と並行して実施していた時期もありますが、実は最もコストのかかっていたのがこうした方法でもありました。この部分にメスを入れなければ当座の販売価格の見直しなど不可能であり、当面本サイト上での通販だけに絞って続けていくことにいたしました。しかし、展示スペースを確保し、実物を見た上で購入していただく、というのが理想ですから、この点に関しては、上手い方法を今後もを模索しながら検討を続けていきたいと考えています。

 実物を見た上で、というお客様のニーズに少しでも応えるために、当面は「直接配送による代金引換」という方法で対応させていただきます。いろいろな人形を見比べて、というわけにはいかず、また、日本全国どこへでも、というわけには参りませんが、私どもが直接納品に伺い、実物に納得していただいた上で代金をお支払いいただく、という方法で、対象は関東甲信越、東海・中部地方、および東北地方の一部を原則といたしますが、その他の地域の方も可能な場合がありますのでご遠慮なくご相談下さい。また、直接配送が不可能な場合で、商品にご納得いただけない場合には、返品にて対応させていただきます。詳しくは、通信販売表記の「返品について」をご覧下さい(→通信販売表記)。ご不便をおかけいたしますが、ご理解・ご協力の程お願い申し上げます。

 この他、上表のようにイベント参加や広告などを凍結し、印刷物や梱包資材についても見直しを図ることになりました。販売経費については、基本的に折衝先というよりは自社だけで完結する問題であり、結果的にこの部分に大なたをふるうことによってやっと価格引下げに漕ぎ付けたというのが実状です。納品時も、専用の化粧箱に入れ高級な包装を施すという理想的な形での納品はできませんが、諸事情をご賢察の上、エコロジ−の観点からもご理解・ご協力を賜りますよう改めてお願い申し上げます。


戦国堂5、まとめ
 以上、全体として必ずしも当初目論んだ通りの大幅な価格改善とはなりませんでしたが、それでも以前よりはお求め安くなったのではと思います。また、今回の価格見直し作業は、私自身にとっても、多くの関係するメーカーや職人の方とコミュニケーションにより、改めて「伝統の和人形を創るということがどういうことなのか」認識をあらたにすることができ、貴重な経験となりました。月日のたつのは早いもので、2005年のオープン以来、夢中で走り続けあっという間の3年数ヶ月でしたが、今回の販売改定を契機として、また新たな多くの熱心なお客様と出会うことができればこれ以上の喜びはありません。

 上記の通り、当面は店舗販売やイベント、広告など目立つ販売PR手段を採らず、このサイト「戦国堂」のみでの販売となりますが、皆様には諸事情をご理解の上、今後とも「戦国堂」の武者人形にご愛顧を賜りますようこの場をお借りしあらためてお願い申し上げます。
武翔

店主の部屋へ戻るHOME